モスろぐ

今、何を考え感じるのか記録するライフログ

今年の夏のある日の私

7月の久しぶり晴れたある日、蒸し暑い中、私は捕虫網を持って走り回っていた。

 

遊びではない…。私の仕事だ。今年は梅雨明けが遅れた為、昆虫の動きが遅かった。啓蟄を過ぎても、なかなか姿が見えず、おかしいなぁ?とのんびり構えていたが…7月になっても冷たい雨が続き、とにかく焦っていた。

 

「あと10匹…いや、15くらい欲しいところだ」

「待ってろ!子供達!蝶をとったる!」

 

私はとある機関で、昆虫関連の仕事をしている。なので夏休みになると子供達の昆虫採集教室が仕事となる。バッタやトンボ、カブトムシやクワガタムシ、モンシロチョウにモンキチョウ、最近はアカボシゴマダラチョウなどなど…。昆虫を採らせてあげるイベントがあるのだ。しかし、残念ながら、中には全くやる気がない、もしくは昆虫採集したことがなく昆虫を採れない子供もいる。採集教室の後には、標本作成もしなければならないので、その時のために事前に昆虫を集めておく。

 

集めた昆虫は1度冷凍し、昇天していただいた後、標本作成用の材料になる。中には採りたてホヤホヤの昆虫を標本にしたがる子もいるが、昆虫は、なかなか死なないのだ。標本用に針を刺した途端、首だけカタカタ痙攣されては、子供達のトラウマになりかねない。

 

40代に足をかけようという女が、とにかく走ってツマグロヒョウモンを採る!飛んでく帽子を横目に、ちょっぴり日焼けも気になるけど、全力で走らないと逃げられる!

 

できれば、オオスカシバなんかあると、かわいいので子供達ウケが良い。ついでに、アオスジアゲハなら子供達のテンションも上がるというものだ。

 

足元から立ち上がるむわっとした草の匂いや、降り注ぐミンミンゼミの声、ウスバキトンボがふわふわ目の前を通り過ぎ、仰ぎ見ると汗が目に入って滲みる。

 

目星をつけておいた樹液の出る木の穴を、小枝で掻いてクワガタをとり、夜には田舎の水銀灯の周りを回って、カブトムシやら小さめのゲンゴロウを拾って集める。

 

完全に遊んでいるように見えるが、遊びではない。これが私の今日の仕事なのだ。

世の中には、こんな仕事もある。