母のこと〜童謡を口ずさむ私
私の好きな歌
霧雨の降る中、目に眩しい赤い花がたくさん咲いている。ムクゲの花だ。ハイビスカスのような花で、髪の長い女性に挿したら美しいだろう。
赤い花を見ると思い出す歌がある。「赤い花白い花」だ。私はこの歌を母と歌い覚えた。テレビ、ラジオから聴いたこともなく、母の口真似をするように、少しおしゃまに一緒に歌い覚えた。
赤い花白い花
赤い花つんで あの人にあげよ
あの人の髪に この花さしてあげよ
赤い花赤い花 あの人の髪に
咲いてゆれるだろう お陽さまのように
白い花つんで あの人にあげよ
あの人の胸に この花さしてあげよ
白い花白い花 あの人の胸に
咲いてゆれるだろう お月さんのように
どちらかと言えば、四姉妹の母親で髪の短い「肝っ玉かーちゃん」のそのままの立派な女性で、この歌が好きだった。
大人になった私は、時々この歌を口ずさむ。
母と歌った記憶と一緒に、時々見せる母の遠い目を思い出す。若くして熊本から群馬へ嫁いだ子沢山の母は、残してきたもの、やりきれなかった事、そんなものたちを心にしまって強く逞しく子育てしてくれたのだろう。
できることなら、今この赤い花、白い花を摘み、亡き母の髪と胸に飾りたい。誰よりも強く、お日様のように、私たち姉妹の未来を照らし、月のように美しい女性であったと伝えたい。